光籃
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)田舎《いなか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)、一|挺《ちょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)のそ/\
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田舎《いなか》の娘であらう。縞柄《しまがら》も分らない筒袖《つつっぽ》の古浴衣《ふるゆかた》に、煮染《にし》めたやうな手拭《てぬぐい》を頬被《ほおかぶ》りして、水の中に立つたのは。……それを其《そ》のまゝに見えるけれど、如何《いか》に奇を好めばと云つても、女の形に案山子《かかし》を拵《こしら》へるものはない。
盂蘭盆《うらぼん》すぎの良《い》い月であつた。風はないが、白露《しらつゆ》の蘆《あし》に満ちたのが、穂に似て、細流《せせらぎ》に揺れて、雫《しずく》が、青い葉、青い茎を伝《つたわ》つて、点滴《したたる》ばかりである。
町を流るゝ大川《おおかわ》の、下《しも》の小橋《こばし》を、もつと此処《ここ》は下流に成る。やがて潟《かた》へ落ちる川口
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