らす方が、よっぽど贅沢じゃないか、と思ったけれど、何しろ、木胴鉄胴《きどうかねどう》からくり胴鳴って通る飛団子、と一所に、隧道《トンネル》を幾つも抜けるんだからね。要するに仲蔵以前の定九郎だろう。
 そこで、小鳥の回向料《えこうりょう》を包んだのさ。
 十時四十分頃、二つさきの山の中の停車場へ下りた。が、別れしなに、袂《たもと》から名札を出して、寄越《よこ》そうとして、また目を光らして引込《ひっこ》めてしまった。
 ――小鳥は比羅《びら》のようなものに包んでくれた。比羅は裂いて汽車の窓から――小鳥は――包み直して宿へ着いてから裏の川へ流した。が、眼張魚《めばる》は、蟇《ひきがえる》だと諺《ことわざ》に言うから、血の頬白は、※[#「魚+成」、第3水準1−94−43]《うぐい》になろうよ。――その男のだね、名刺に、用のありそうな人物が、何となく、立っていたんじゃないかとも思ったよ。」
 家業がら了解《わかり》は早い。
「その向《むき》の方なら、大概私が顔見知りよ。……いいえ、盗賊《どろぼう》や風俗の方ばかりじゃありません。」
「いや、大きに――それじゃ違ったろう。……安心した。――時に……
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