《おんな》の姿が、蚊帳の目が裂けて出る、と行燈《あんどう》が真赤《まっか》になって、蒼い細い顔が、黒髪《かみ》を被《かぶ》りながら黒雲の中へ、ばったり倒れた。
ト車軸を流す雨になる。
電燈が点《つ》いたが、もうその色は白かった。
婆々《ばばあ》の言った、両の袂の一つであろう、無理心中で女郎が一人。――
戸を開ける音、閉める音。人影が燈籠《とうろう》のように、三階で立騒いだ。
照吉は……」
と民弥は言って、愁然《しゅうぜん》とすると、梅次も察して、ほろりと泣く。
「ああ、その弟ばかりじゃない、皆《みんな》の身代りになってくれたように思う。」
[#地から1字上げ]明治四十四(一九一一)年三月
底本:「泉鏡花集成4」ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年10月24日第1刷発行
2004(平成16)年3月20日第2刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第十三卷」岩波書店
1941(昭和16)年6月30日発行
※誤植の確認には底本の親本を参照しました。
入力:土屋隆
校正:門田裕志
2006年6月26日作成
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