を摺《ず》らした。
(この階子段《はしごだん》の下から、向直ってのっそりのっそり、何だか不躾《ぶしつけ》らしい、きっと田舎のお婆さんだろうと思いました。いけ強情な、意地の悪い、高慢なねえ、その癖しょなしょなして、どうでしょう、可恐《おそろし》い裾長《すそなが》で、……地《じ》へ引摺るんでございましょうよ。
裾端折《すそはしょり》を、ぐるりと揚げて、ちょいと帯の処へ挟んだんですがねえ、何ですか、大きな尻尾を捲《ま》いたような、変な、それは様子なんです。……
おや、無面目《むめんもく》だよ、人の内へ、穿物《はきもの》を懐へ入れて、裾端折のまんま、まあ、随分なのが御連中の中に、とそう思っていたんですがね、へい、まぐれものなんでございますかい。)
わなわな震えて聞いていたっけ、堪《たま》らなくなった、と見えてお三輪は私に縋《すが》り着いた。
いや、お前も、可恐《おっか》ながる事は無い。……
もう、そこまでになると、さすがにものの分った姉さんたちだ、お蘭さんもお種さんも、言合わせたように。私にも分った。言出して見ると皆|同一《おんなじ》。」……
二十一
「茶番さ。」
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