、団子|噛《かじ》るにも、蕎麦《そば》を食うにも、以来、欣弥さんの嫁御の事で胸が詰《つま》る。しかる処へ、奥方連《おくがたづれ》のお乗込みは、これは学問修業より、槍先《やりさき》の功名、と称《とな》えて可《よ》い、とこう云うてな。
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この間に、おりく茶を運ぶ、がぶりとのむ。
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はッはッはッはッ。
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撫子弱っている。
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村越 (額に手を当て)いや、召使い……なんですよ。
七左 いずれそりゃ、そりゃいずれ、はッはッはッ、若いものの言う事は極《きま》っておる。――奥方、気にせまい。いずれそりゃ、田鼠化為鶉《でんそかしてうずらとなる》、雀入海中為蛤《すずめかいちゅうにいってはまぐりとなる》、とあってな、召つかいから奥方になる。――老人田舎もののしょうが[#「しょうが」に傍点]には、山の芋を穿《ほ》って鰻《うなぎ》とする法を飲込んでいるて。拙者《せっしゃ》、足軽
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