にも、こんなにも、松本中での、あでやかな[#「あでやかな」に傍点]奥方じゃ。
白糸 お家《うち》が違やしませんか。
七左 村越弥兵衛どの御子息欣弥殿。何が違う。
白糸 おや、それじゃ私の生霊《いきりょう》が行ってるのかしら。
七左 ええ……変なことを言う。
白糸 見て下さい、私とは――違いますか。
七左 いや、この方が、床の間に活《い》けた白菊かな。
白糸 え。
七左 まずおいで。(別れつつ)はあてな、別嬪《べっぴん》二人二千石、功名々々。(繻子《しゅす》の洋傘《こうもり》を立てて入る。)
白糸 (二三度|※[#「低」の「にんべん」に代えて「彳」、第3水準1−84−31]徊《ていかい》して、格子にかかる)御免なさい。
[#ここで字下げ終わり]
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これよりさき、撫子、膳、風呂敷など台所へ。欣弥は一室に入《い》り、撫子、通盆《かよいぼん》を持って斉《ひと》しく入る。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
その (取次ぐ)はい。
白糸 (じろりと、その髪容《かみかたち》を視《なが》む)村越さんのお住居《すまい》はこちらで?
その はい、
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