、力の及ぶべからざるをいかにせん。進みて敵すべからず、退きては遁《のが》るること難《かた》し。
 渠はその平生《へいぜい》においてかつ百金を吝《お》しまざるなり。されども今夜|懐《ふところ》にせる百金は、尋常一様の千万金に直《あたい》するものにして、渠が半身の精血とも謂《い》っつべきなり。渠は換えがたく吝しめり。今ここにこれを失わんか、渠はほとんど再びこれを獲《う》るの道あらざるなり。されども渠はついに失わざるべからざるか、豪放|豁達《かったつ》の女丈夫も途方に暮れたりき。
「何をぐずぐずしてやがるんで! サッサと出せ、出せ」
 白糸は死守せんものと決心せり。渠の脣《くちびる》は黒くなりぬ。渠の声はいたく震いぬ。
「これは与《や》られないよ」
「与《く》れなけりゃ、ふんだくるばかりだ」
「遣《や》っつけろ、遣っつけろ!」
 その声を聞くとひとしく、白糸は背後《うしろ》より組み付かれぬ。振り払わんとする間もあらで、胸も挫《ひし》ぐるばかりの翼緊《はがいじ》めに遭《あ》えり。たちまち暴《あら》くれたる四隻《よつ》の手は、乱雑に渠の帯の間と内懐とを撈《かきさが》せり。
「あれえ!」と叫びて援
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