すますまじめにて、
「水芸の太夫? ははあ、それじゃこのごろ評判の……」
かく言いつつ珍しげに女の面《おもて》を※[#「(虍/助のへん)+見」、第4水準2−88−41]《のぞ》きぬ。白糸はさっと赧《あから》む顔を背《そむ》けつつ、
「ああもうたくさん、堪忍《かに》しておくれよ」
「滝の白糸というのはおまえさんか」
白糸は渠の語《ことば》を手もて制しつ。
「もういいってばさ!」
「うん、なるほど!」と心の問うところに答え得たる風情《ふぜい》にて、欣弥は頷《うなず》けり。白糸はいよいよ羞じらいて、
「いやだよ、もう。何がなるほどなんだね」
「非常にいい女だと聞いていたが、なるほど……」
「もういいってばさ」
つと身を寄せて、白糸はやにわに欣弥を撞《つ》きたり。
「ええあぶねえ! いい女だからいいと言うのに、撞き飛ばすことはないじゃないか」
「人をばかにするからさ」
「ばかにするものか。実に美しい、何歳《いくつ》になるのだ」
「おまえさん何歳《いくつ》になるの?」
「私は二十六だ」
「おや六なの? まだ若いねえ。私なんぞはもう婆《ばばあ》だね」
「何歳《いくつ》さ」
「言うと愛想を尽か
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