革鞄の怪
泉鏡花
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)詰《つま》らない
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|間《けん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+爭」、第4水準2−13−24]《もが》き
−−
一
「そんな事があるものですか。」
「いや、まったくだから変なんです。馬鹿々々しい、何、詰《つま》らないと思う後《あと》から声がします。」
「声がします。」
「確かに聞えるんです。」
と云った。私たち二人は、その晩、長野の町の一大構《あるおおがまえ》の旅館の奥の、母屋《おもや》から板廊下を遠く隔てた離座敷《はなれざしき》らしい十畳の広間に泊った。
はじめ、停車場《ステイション》から俥《くるま》を二台で乗着けた時、帳場の若いものが、
「いらっしゃい、どうぞこちらへ。」
で、上靴を穿《は》かせて、つるつるする広い取着《とッつき》の二階へ導いたのであるが、そこから、も一ツつかつかと階子段《はしごだん》を
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