まはその胴中《どうなか》あたり連《しき》りに進行いたしをり候が、あたかも凧《たこ》の糸を繰出す如く、走馬燈籠《まわりどうろう》の間断なきやう俄《にわか》に果つべくも見え申さず。唯《ただ》人の頭も、顔も、黒く塗りて、肩より胸、背、下腹のあたりまで、墨もていやが上に濃く塗りこくり、赤褌襠《あかふどし》着けたる臀《いしき》、脛《はぎ》、足、踵《かかと》、これをば朱を以て真赤に色染めたるおなじ扮装《いでたち》の壮佼《わかもの》たち、幾百人か。一人行く前の人の後《あと》へ後へと繋《つな》ぎあひ候が、繰出す如くずんずんと行き候。およそ半時間は連続いたし候ひしならむ、やがて最後の一人の、身体《からだ》黒く足赤きが眼前をよぎり候あと、またひらひらと群集左右より寄せ合うて、両側に別れたる路を塞《ふさ》ぎ候時、その過行《すぎゆ》きし方《かた》を打眺《うちなが》め候へば、彼《か》の怪物の全体は、遥《はるか》なる向の坂をいま蜿《うね》り蜿りのぼり候|首尾《しゅび》の全《まった》きを、いかにも蜈蚣《むかで》と見受候。あれはと見る間に百尺《ひゃくせき》波状の黒線《こくせん》の左右より、二条の砂煙《さえん》真白《ま
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