が聞覚えた、京千代ちい姐《ねえ》。
 ……ものの形をしたものは、こわいように、生きていますわね。

 ――やがてだわね、大きな樹の下の、畷《なわて》から入口の、牛小屋だが、厩《うまや》だかで、がたんがたん、騒しい音がしました。すっと立って若い人が、その方へ行きましたっけ。もう返った時は、ひっそり。苧殻《おがら》の燃《もえ》さし、藁の人形を揃えて、くべて、逆縁ながらと、土瓶をしたんで、ざあ、ちゅうと皆消えると、夜あらしが、颯《さっ》と吹いて、月が真暗《まっくら》になって、しんとする。(行きましょう、行きましょう。)ぞっと私は凄《すご》くなって、若い人の袖を引張《ひっぱ》って、見はるかしの田畝道へ。……ほっとして、
(聞かして下さいまし、どんなお方)。
(私か。)
(あなた。)
(森の祠の、金勢明神《こんせいみょうじん》。)
(…………)
(男の勢だ。)
(キャア。)
 話に聞いた振袖新造《ふりそでしんぞ》が――台のものあらしといって、大びけ過ぎに女郎屋の廊下へ出ましたと――狸に抱かれたような声を出して、夢中で小一町駆出しましたが、振向いても、立って待っても、影も形も見えません、もう朝もや
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