た。(門火《かどび》、門火。)なんのと、呑気《のんき》なもので、(酒だと燗《かん》だが、こいつは死人焼《しびとやき》だ。このしろでなくて仕合せ、お給仕をしようか。)……がつがつ私が食べるうちに、若い女が、一人、炉端で、うむと胸も裾もあけはだけで起上りました。あなた、その時、火の誘った夜風で、白い小さな人形がむくりと立ったじゃありませんか。ぽんと若い人が、その人形をもろに倒すと、むこうで、ばったり、今度は、うつむけにまた寝ました。
驚きましたわ。藁を捻《ひね》ったような人形でさえ、そんな業《わざ》をするんだもの。……活きたものは、いざとなると、どんな事をしようも知れない、可恐《おそろし》いようね、ええ?……――もう行《や》ってる、寝込《ねごみ》の御飯をさらって死人焼で目刺を――だって、ほほほ、まあ、そうね……
いえね、それについて、お前さん――あなたの前だけども、お友だちの奥さん、京千代さんは、半玉の時分、それはいけずの、いたずらでね、なかの妹(お民をいう)は、お人形をあつかえばって、屏風《びょうぶ》を立てて、友染の掻巻《かいまき》でおねんねさせたり、枕を二つならべたり、だったけ
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