》の女房の、婀娜《あだ》にたおやかなのがそっくりで、半四郎茶屋と呼ばれた引手茶屋の、大尽は常客だったが、芸妓《げいしゃ》は小浜屋の姉妹《きょうだい》が一の贔屓《ひいき》だったから、その祝宴にも真先《まっさき》に取持った。……当日は伺候《しこう》の芸者大勢がいずれも売出しの白粉の銘、仙牡丹に因《ちな》んだ趣向をした。幇間《ほうかん》なかまは、大尽客を、獅子《しし》に擬《なぞら》え、黒牡丹と題して、金の角の縫いぐるみの牛になって、大広間へ罷出《まかりい》で、馬には狐だから、牛に狸が乗った、滑稽《おどけ》の果《はて》は、縫ぐるみを崩すと、幇間同士が血のしたたるビフテキを捧げて出た、獅子の口へ、身を牲《にえ》にして奉った、という生命《いのち》を賭《と》した、奉仕《サアビス》である。
(――同町内というではないが、信也氏は、住居《すまい》も近所で、鴾画伯とは別懇だから、時々その細君の京千代に、茶の間で煙草話に聞いている――)
小浜屋の芸妓姉妹は、その祝宴の八百松で、その京千代と、――中の姉のお民《たみ》――(これは仲之町を圧して売れた、)――小股《こまた》の切れた、色白なのが居て、二人で、囃
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