効《かい》もありません。
公子 (色やや嶮《けわ》し)随分、勝手を云う。が、貴女の美しさに免じて許す。歌う鳥が囀《さえず》るんだ、雲雀《ひばり》は星を凌《しの》ぐ。星は蹴落《けおと》さない。声が可愛らしいからなんです。(女房に)おい、注《つ》げ。
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女房酌す。
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美女 (怯《おく》れたる内端《うちわ》な態度)もうもう、決して、虚飾《みえ》、栄燿《えよう》を見せようとは思いません。あの、ただ活きている事だけを知らせとう存じます。
公子 (冷《ひやや》かに)止《よ》したが可《よ》かろう。
美女 いいえ、唯今《ただいま》も申します通り、故郷《くに》へ帰って、そこに留《とど》まります気は露ほどもないのです。ちょっとお許しを受けまして生命《いのち》のあります事だけを。
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公子、無言にして頭《かぶり》掉《ふ》る。美女、縋《すが》るがごとくす。
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あの、お許しは下さいませんか。ちっとの外出《そとで》もなりませんか。
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