るぎ》を抜いて、頭上に翳《かざ》し、ハタと窓外を睨《にら》む。
侍女六人、斉《ひと》しくその左右に折敷き、手に手に匕首《あいくち》を抜連れて晃々《きらきら》と敵に構う。
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外道、退《ひ》くな。(凝《じつ》と視《み》て、剣の刃を下に引く)虜《とりこ》を離した。受取れ。
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侍女一 鎧をめしたばっかりで、御威徳を恐れて引きました。
侍女二 長う太く、数百《すひゃく》の鮫のかさなって、蜈蚣《むかで》のように見えたのが、ああ、ちりぢりに、ちりぢりに。
侍女三 めだか[#「めだか」に傍点]のように遁《に》げて行《ゆ》きます。
公子 おお、ちょうど黒潮等が帰って来た、帰った。
侍女四 ほんに、おつかい帰りの姉さんが、とりこを抱取って下すった。
公子 介抱してやれ。お前たちは出迎え。
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侍女三人ずつ、一方は闥《とびら》のうちへ。一方は廻廊に退場。
公子、真中《まんなか》に、すっくと立ち、静かに剣《つるぎ》を納めて、右手《めて》なる白珊瑚《しろさんご》の椅子に凭《よ》る。騎士五人廻廊まで登場
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