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騎士一同 (槍《やり》を伏せて、裾《うずくま》り、同音に呼ぶ)若様。
公子 おお、帰ったか。
騎士一 もっての外な、今ほどは。
公子 何でもない、私は無事だ、皆御苦労だったな。
騎士一同 はッ。
公子 途中まで出向ったろう、僧都はどうしたか。
騎士一 あとの我ら夥間《なかま》を率いて、入道鮫を追掛けて参りました。
公子 よい相手だ、戦闘は観《み》ものであろう。――皆は休むが可《い》い。
騎士 槍は鞘《さや》に納めますまい、このまま御門を堅めまするわ。
公子 さまでにせずとも大事ない、休め。
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騎士等、礼拝して退場。侍女一、登場。
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侍女一 御安心遊ばしまし、疵《きず》を受けましたほどでもございません。ただ、酷《ひど》く驚きまして。
公子 可愛相《かわいそう》に、よく介抱してやれ。
侍女一 二人が附添っております、(廻廊を見込む)ああ、もう御廊下まで。(公子のさしずにより、姿見に錦の蔽《おおい》を掛け、闥《とびら》に入《い
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