海城発電
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)垢着《あかつ》きたる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)富豪|柳氏《りゅうし》の家
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》りたる眼
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一
「自分も実は白状をしやうと思つたです。」
と汚れ垢着《あかつ》きたる制服を絡《まと》へる一名の赤十字社の看護員は静に左右を顧《かえり》みたり。
渠《かれ》は清国《しんこく》の富豪|柳氏《りゅうし》の家なる、奥まりたる一室に夥多《あまた》の人数《にんず》に取囲まれつつ、椅子《いす》に懸りて卓《つくえ》に向へり。
渠を囲みたるは皆|軍夫《ぐんぷ》なり。
その十数名の軍夫の中に一人|逞《たく》ましき漢《おのこ》あり、屹《き》と彼《か》の看護員に向ひをれり。これ百人長なり。海野《うんの》といふ。海野は年配《ねんぱい》三十八、九、骨太《ほねぶと》なる手足あくまで肥へて、身の丈《たけ》
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