海異記
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)裾《すそ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)幾億|尋《ひろ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》る
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そうしましょう/\
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一
砂山を細く開いた、両方の裾《すそ》が向いあって、あたかも二頭の恐しき獣の踞《うずくま》ったような、もうちっとで荒海へ出ようとする、路《みち》の傍《かたえ》に、崖《がけ》に添うて、一軒漁師の小家《こいえ》がある。
崖はそもそも波というものの世を打ちはじめた昔から、がッきと鉄《くろがね》の楯《たて》を支《つ》いて、幾億|尋《ひろ》とも限り知られぬ、潮《うしお》の陣を防ぎ止めて、崩れかかる雪のごとく鎬《しのぎ》を削る頼母《たのも》しさ。砂山に生え交《まじ》る、茅《かや》、芒《すすき》はやがて散り、はた年ごとに枯れ果てて
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