て、捧げ持って、
「南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》、」
「南無阿弥陀仏。」
折から洲崎のどの楼《うち》ぞ、二階よりか三階よりか、海へ颯《さっ》と打込む太鼓。
浴衣は静《しずか》に流れたのである。
菊枝は活々《いきいき》とした女《むすめ》になったが、以前から身に添えていた、菊五郎格子の帯揚《おびあげ》に入れた写真が一枚、それに朋輩の女《むすめ》から、橘之助の病気見舞を紅筆《べにふで》で書いて寄越《よこ》したふみとは、その名の菊の枝に結んで、今年は二十《はたち》。
[#地から1字上げ]明治三十三(一九〇〇)年十一月
底本:「泉鏡花集成3」ちくま文庫、筑摩書房
1996(平成8)年1月24日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第六卷」岩波書店
1941(昭和16)年11月10日第1刷発行
入力:門田裕志
校正:染川隆俊
2009年5月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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