り、果《はて》は胡坐《あぐら》かいて能代《のしろ》の膳の低いのを、毛脛《けずね》へ引挟《ひっぱさ》むがごとくにして、紫蘇《しそ》の実に糖蝦《あみ》の塩辛《しおから》、畳み鰯《いわし》を小皿にならべて菜ッ葉の漬物|堆《うずたか》く、白々と立つ粥の湯気の中に、真赤《まっか》な顔をして、熱いのを、大きな五郎八茶碗《ごろはちぢゃわん》でさらさらと掻食《かっくら》って、掻食いつつ菊枝が支えかねたらしく夜具に額をあてながら、時々吐息を深くするのを、茶碗の上から流眄《ながしめ》に密《そっ》と見ぬように見て釣込まれて肩で呼吸《いき》。
 思出したように急がしく掻込《かっこ》んで、手拭《てぬぐい》の端《はじ》でへの字に皺《しわ》を刻んだ口の端《はた》をぐいと拭《ふ》き、差置いた箸《はし》も持直さず、腕を組んで傾いていたが、台所を見れば引窓から、門口《かどぐち》を見れば戸の透《すき》から、早や九時十時の日ざしである。このあたりこそ気勢《けはい》もせぬが、広場一ツ越して川端へ出れば、船の行交《ゆきか》い、人通り、烟突《えんとつ》の煙、木場の景色、遠くは永代、新大橋、隅田川の模様なども、同一《おんなじ》時刻の
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