ん、済《すま》ないこッてすがせめてお一人だけならばと、張《はり》も意気地もなく母親の帯につかまって、別際《わかれぎわ》に忍泣《しのびなき》に泣いたのを、寝ていると思った父親が聞き取って、女《むすめ》が帰って明くる日も待たず自殺した。
報知《しらせ》を聞くと斉《ひと》しく、女《むすめ》は顔の色が変って目が窪《くぼ》んだ、それなりけり。砂利へ寝かされるような蒲団《ふとん》に倒れて、乳房の下に骨が見える煩い方。
肺病のある上へ、驚いたがきっかけとなって心臓を痛めたと、医者が匙《さじ》を投げてから内証は証文を巻いた、但し身附の衣類諸道具は編笠一蓋《あみがさいっかい》と名づけてこれをぶったくり。
手当も出来ないで、ただ川のへりの長屋に、それでも日の目が拝めると、北枕に水の方へ黒髪を乱して倒れている、かかる者の夜更けて船頭の読経を聞くのは、どんなに悲しかろう、果敢《はか》なかろう、情《なさけ》なかろう、また嬉しかろう。
「妙法蓮華経如来寿量品第十六自我得仏来所経諸劫数無量百千万億載阿僧祇。」と誦《じゅ》するのが、いうべからざる一種の福音を川面《かわづら》に伝えて渡った、七兵衛の船は七兵衛が乗
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