、応ずるは売れるからで、売るのには身をもって勤めねばならないとか。
 いかに孝女でも悪所において斟酌《しんしゃく》があろうか、段々|身体《からだ》を衰えさして、年紀《とし》はまだ二十二というのに全盛の色もやや褪《あ》せて、素顔では、と源平の輩《やから》に遠慮をするようになると、二度三度、月の内に枕が上らない日があるようになった。
 扱帯《しごき》の下を氷で冷すばかりの容体を、新造《しんぞ》が枕頭《まくらもと》に取詰めて、このくらいなことで半日でも客を断るということがありますか、死んだ浮舟なんざ、手拭《てぬぐい》で汗を拭《ふ》く度に肉が殺《そ》げて目に見えて手足が細くなった、それさえ我儘をさしちゃあおきませなんだ、貴女は御全盛のお庇《かげ》に、と小刀針《こがたなばり》で自分が使う新造《もの》にまでかかることを言われながら、これにはまた立替えさしたのが、控帳についてるので、悔しい口も返されない。
 という中にも、随分気の確《たしか》な女、むずかしく謂えば意志が強いという質《たち》で、泣かないが蒼《あお》くなる風だったそうだから、辛抱はするようなものの、手元が詰《つま》るに従うて謂うまじき無
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