ずるりと縁台へ脱いで赤裸々《まっぱだか》。
 黄色な膚《はだ》も、茶じみたのも、清水の色に皆白い。
 学生は面《おもて》を背けた。が、年増に限らぬ……言合せたように皆頭痛膏を、こめかみへ。その時、ぽかんと起きた、茶店の女のどろんとした顔にも、斉《ひと》しく即効紙《そっこうし》がはってある。
「食《や》るが可《い》い。よく冷えてら。堪《たま》らねえや。だが、あれだよ、皆《みんな》、渡してある小遣《こづかい》で各々《めいめい》持《もち》だよ――西瓜《すいか》が好《よ》かったらこみで行きねえ、中は赤いぜ、うけ合だ。……えヘッヘッ。」
 きゃあらきゃあらと若い奴《やつ》、蜩《ひぐらし》の化けた声を出す。
「真桑、李を噛《かじ》るなら、あとで塩湯を飲みなよ。――うんにゃ飲みなよ。大金のかかった身体《からだ》だ。」
 と大爺は大王のごとく、真正面の框《かまち》に上胡坐《あげあぐら》になって、ぎろぎろと膚《はだ》を※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》す。
 とその中を、すらりと抜けて、褄《つま》も包ましいが、ちらちらと小刻《こきざみ》に、土手へ出て、巨石《おおいし》の其方《そなた》の
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