《すて》のおいらん草など塵塚《ちりづか》へ運ぶ途中に似た、いろいろな湯具|蹴出《けだ》し。年増まじりにあくどく化粧《けわ》った少《わか》い女が六七人、汗まみれになって、ついそこへ、並木を来かかる。……
年増分が先へ立ったが、いずれも日蔭を便《たよ》るので、捩《よじ》れた洗濯もののように、その濡れるほどの汗に、裾《すそ》も振《ふり》もよれよれになりながら、妙に一列に列を造った体《てい》は、率いるものがあって、一からげに、縄尻でも取っていそうで、浅間しいまであわれに見える。
故あるかな、背後に迫って男が二人。一人の少《わか》い方は、洋傘《こうもり》を片手に、片手は、はたはたと扇子を使い使い来るが、扇子面に広告の描いてないのが可訝《おかし》いくらい、何のためか知らず、絞《しぼり》の扱帯《しごき》の背《せなか》に漢竹の節を詰めた、杖《ステッキ》だか、鞭《むち》だか、朱の総《ふさ》のついた奴《やつ》をすくりと刺している。
年倍《としばい》なる兀頭《はげあたま》は、紐《ひも》のついた大《おおき》な蝦蟇口《がまぐち》を突込《つッこ》んだ、布袋腹《ほていばら》に、褌《ふどし》のあからさまな前はだ
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