もので、村はずれには、落葉、枯葉、焼灰に交って、※[#「けものへん+葛」、第3水準1−87−81]子鳥《あとり》、頬白《ほおじろ》、山雀《やまがら》、鶸《ひわ》、小雀《こがら》などと言う、紅《あか》だ、青だ、黄色だわ、紫の毛も交って、あの綺麗な小鳥どもが、路傍《みちばた》にはらはらと落ちている。こいつあ、それ、時節が今頃になりますと、よく、この信州路、木曾街道の山家には、暗い軒に、糸で編んで、ぶら下げて、美しい手鞠《てまり》が縺《もつ》れたように売ってるやつだて。それが、お前さん、火事騒ぎに散らかったんで――驚いたのは、中に交って、鴛鴦《おしどり》が二羽……番《つがい》かね。……
 や、頂きます、ト、ト、ごぜえやさ。」
 と小村さんの酌を、蓋《ふた》するような大《おおき》な掌《てのひら》で請けながら、
「どうもね、捨って抱きたいようでがしたぜ。まさか、池に泳いだり、樹に眠ったのが、火の粉を浴びはしますめえ。売ものが散らばりましたか、真赤《まっか》に染《そま》った木の葉を枕で、目を眠っていましたよ。
 天秤棒一本で、天井へ宙乗《ちゅうのり》でもするように、ふらふらふらふら、山から山を経歴
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