雨ばけ
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)然《しか》るべき
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|燈《とう》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひよろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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あちこちに、然《しか》るべき門は見えるが、それも場末で、古土塀《ふるどべい》、やぶれ垣《がき》の、入曲《いりまが》つて長く続く屋敷町《やしきまち》を、雨《あま》もよひの陰気な暮方《くれがた》、その県の令《れい》に事《つか》ふる相応《そうおう》の支那《しな》の官人が一人、従者を従《したが》へて通り懸《かか》つた。知音《ちいん》の法筵《ほうえん》に列するためであつた。
……来かゝる途中に、大川《おおかわ》が一筋《ひとすじ》流れる……其《そ》の下流のひよろ/\とした――馬輿《うまかご》のもう通じない――細橋《ほそばし》を渡り果てる頃、暮《くれ》六《む》つの鐘がゴーンと鳴つた。遠山《とおやま》の形が夕靄《ゆうもや》とともに近づいて、麓《ふもと》の影に暗く住む伏家《ふせや》の数々、小商《こあきない》
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