遣《おしや》って、がっくりと筋が萎《な》えた風に、折重なるまで摺寄《すりよ》りながら、黙然《だんま》りで、燈《ともしび》の影に水のごとく打揺《うちゆら》ぐ、お三重の背中を擦《さす》っていた。
「島屋の亭が、そんな酷《ひど》い事をしおるかえ。可いわ、内の御隠居にそう言うて、沙汰をして上げよう。心安う思うておいで、ほんにまあ、よう和女《あんた》、顔へ疵《きず》もつけんの。」
 と、かよわい腕《かいな》を撫下《なでお》ろす。
「ああ、それも売物じゃいうだけの斟酌《しんしゃく》に違いないな。……お客様に礼言いや。さ、そして、何かを話しがてら、御隠居の炬燵《こたつ》へおいで。切下髪《きりさげがみ》に頭巾《ずきん》被《かぶ》って、ちょうどな、羊羹《ようかん》切って、茶を食べてや。
 けども、」
 とお三重の、その清らかな襟許《えりもと》から、優しい鬢毛《びんのけ》を差覗《さしのぞ》くように、右瞻左瞻《とみこうみ》て、
「和女《あんた》、因果やな、ほんとに、三味線は弾けぬかい。ペンともシャンとも。」
 で、わざと慰めるように吻々《ほほ》と笑った。
 人の情《なさけ》に溶けたと見える……氷る涙の玉を散
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