あるめえし、汝《てめえ》、定九郎《さだくろう》のように呼ぶなえ、と唇を捻曲《ねじま》げて、叔父さんとも言わせねえ、兄さんと呼べ、との御意だね。
 この叔父さんのお供だろう。道中の面白さ。酒はよし、景色はよし、日和は続く。どこへ行っても女はふらない。師走の山路に、嫁菜が盛りで、しかも大輪《おおりん》が咲いていた。
 とこの桑名、四日市、亀山と、伊勢路へ掛《かか》った汽車の中から、おなじ切符のたれかれが――その催《もよおし》について名古屋へ行った、私たちの、まあ……興行か……その興行の風説《うわさ》をする。嘘にもどうやら、私の評判も可《よ》さそうな。叔父はもとより。……何事も言うには及ばん。――私が口で饒舌《しゃべ》っては、流儀の恥になろうから、まあ、何某《なにがし》と言ったばかりで、世間は承知すると思って、聞きねえ。
 ところがね、その私たちの事を言うついでに、この伊勢へ入ってから、きっと一所に出る、人の名がある。可いかい、山田の古市に惣市《そういち》と云う按摩鍼《あんまはり》だ。」
 門附はその名を言う時、うっとりと瞳を据えた。背《せなか》を抱《いだ》くように背後《うしろ》に立った按摩
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