まないように何んとなく悄《しお》れて行く。……その後《あと》から、鼠色の影法師。女の影なら月に地《つち》を這《は》う筈《はず》だに、寒い道陸神《どうろくじん》が、のそのそと四五尺離れた処を、ずっと前方《むこう》まで附添ったんだ。腰附、肩附、歩行《ある》く振《ふり》、捏《で》っちて附着《くッつ》けたような不恰好《ぶかっこう》な天窓《あたま》の工合、どう見ても按摩だね、盲人《めくら》らしい、めんない千鳥よ。……私あ何んだ、だから、按摩が箱屋をすると云っちゃ可笑《おかし》い、盲目《めくら》になった箱屋かも知れないぜ。」
「どんな風の、どれな。」
と門《かど》へ出そうにする。
「いや、もう見えない。呼ばれた家《うち》へ入ったらしい。二人とも、ずっと前方《さき》で居なくなった。そうか。ああ、盲目の箱屋は居ねえのか。アまた殖《ふ》えたぜ……影がさす、笛の音に影がさす、按摩の笛が降るようだ。この寒い月に積《つも》ったら、桑名の町は針の山になるだろう、堪《たま》らねえ。」
とぐいと呷《あお》って、
「ええ、ヤケに飲め、一杯どうだ、女房《おかみ》さん附合いねえ。御亭主は留守だが、明放《あけっぱな》し
前へ
次へ
全95ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング