ちだったと聞く。仰いで高い処に、朱の欄干のついた窓があって、そこから顔を出す、その顔が自分の顔であったんだろうにトそう思いながら破れた垣の穴ん処《とこ》に腰をかけてぼんやりしていた。
いつでもあの翼《はね》の生えたうつくしい人をたずねあぐむ、その昼のうち精神の疲労《つかれ》ないうちは可《い》いんだけれど、度が過ぎて、そんなに晩《おそ》くなると、いつも、こう滅入《めい》ってしまって、何だか、人に離れたような、世間に遠ざかったような気がするので、心細くもあり、うら悲しくもあり、覚束《おぼつか》ないようでもあり、恐しいようでもある。嫌な心持だ、嫌な心持だ。
早く帰ろうとしたけれど、気が重くなって、その癖神経は鋭くなって、それでいてひとりでにあくびが出た。あれ!
赤い口をあいたんだなと、自分でそうおもって、吃驚《びっくり》した。
ぼんやりした梅の枝が手をのばして立ってるようだ。あたりを※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》すと真暗《まっくら》で、遠くの方で、ほう、ほうッて、呼ぶのは何だろう。冴えた通る声で野末を押《おし》ひろげるように、鳴く、トントントントンと谺《こだま》
前へ
次へ
全44ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング