飛んで、遥《はる》か川下の方へ憎らしく落着いた風でゆったりしてふわりと落ちると、たちまち矢のごとくに流れ出した。
博士は片手で目金を持って、片手を帽子にかけたまま、烈《はげ》しく、急に、ほとんど数える隙《ひま》がないほど靴のうらで虚空を踏んだ、橋ががたがたと動いて鳴った。
「母様《おっかさん》、母様、母様。」
と私は足ぶみした。
「あい。」としずかに、おいいなすったのが背後《うしろ》に聞える。
窓から見たまま振向きもしないで、急込《せきこ》んで、
「あらあら流れるよ。」
「鳥かい、獣《けだもの》かい。」と極めて平気でいらっしゃる。
「蝙蝠《こうもり》なの、傘《からかさ》なの、あら、もう見えなくなったい、ほら、ね、流れッちまいました。」
「蝙蝠ですと。」
「ああ、落ッことしたの、可哀相に。」
と思わず歎息をして呟《つぶや》いた。
母様は笑《えみ》を含んだお声でもって、
「廉《れん》や、それはね、雨が晴れるしらせなんだよ。」
この時猿が動いた。
九
一|廻《まわり》くるりと環《わ》にまわって、前足をついて、棒杭《ぼうぐい》の上へ乗って、お天気を見るのであろう
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