て、母様《おつかさん》の気高《けだか》い美《うつく》しい、頼母《たのも》しい、温当《おんたう》な、そして少《すこ》し痩《や》せておいでの、髪《かみ》を束《たば》ねてしつとりして居《ゐ》らつしやる顔《かほ》を見《み》て、何《なに》か談話《はなし》をしい/\、ぱつちりと眼《め》をあいてるつもりなのが、いつか其《その》まんまで寝《ね》てしまつて、眼《め》がさめると、また直《すぐ》支度《したく》を済《す》まして、学校《がくかう》へ行《ゆ》くんだもの。そんなこといつてる隙《ひま》がなかつたのが、雨《あめ》で閉籠《とぢこも》つて淋《さみ》しいので思《おも》ひ出《だ》した序《ついで》だから聞《き》いたので、
「何故《なぜ》だつて、何《なん》なの、此間《このあひだ》ねえ、先生《せんせい》が修身《しうしん》のお談話《はなし》をしてね、人《ひと》は何《なん》だから、世《よ》の中《なか》に一番《いちばん》えらいものだつて、さういつたの。母様《おつかさん》違《ちが》つてるわねえ。」
「むゝ。」
「ねツ違《ちが》つてるワ、母様《おつかさん》。」
と揉《もみ》くちやにしたので、吃驚《びつくり》して、ぴつたり手《て
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