ら》へ出《で》る。そこン処《とこ》は梅林《ばいりん》で上《うへ》の山《やま》が桜《さくら》の名所《めいしよ》で、其《その》下《した》に桃谷《もゝたに》といふのがあつて、谷間《たにあひ》の小流《こながれ》には、菖浦《あやめ》、燕子花《かきつばた》が一杯《いつぱい》咲《さ》く。頬白《ほゝじろ》、山雀《やまがら》、雲雀《ひばり》などが、ばら/\になつて唄《うた》つて居《ゐ》るから、綺麗《きれい》な着物《きもの》を着《き》た問屋《とひや》の女《むすめ》だの、金満家《かねもち》の隠居《いんきよ》だの、瓢《ひさご》を腰《こし》へ提《さ》げたり、花《はな》の枝《えだ》をかついだりして千鳥足《ちどりあし》で通《とほ》るのがある、それは春《はる》のことで。夏《なつ》になると納涼《すずみ》だといつて人《ひと》が出《で》る、秋《あき》は茸狩《たけがり》に出懸《でか》けて来《く》る、遊山《ゆさん》をするのが、皆《みんな》内《うち》の橋《はし》を通《とほ》らねばならない。
この間《あひだ》も誰《たれ》かと二三|人《にん》づれで、学校《がくかう》のお師匠《しゝやう》さんが、内《うち》の前《まへ》を通《とほ》つて、
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