とき》に渡《わた》つたからツて、少《すこ》し揺《ゆ》れはしやうけれど、折《を》れて落《お》つるやうな憂慮《きづかひ》はないのであつた。
ちやうど市《まち》の場末《ばすゑ》に住《す》むでる日傭取《ひようとり》、土方《どかた》、人足《にんそく》、それから、三味線《さみせん》を弾《ひ》いたり、太鼓《たいこ》を鳴《な》らして飴《あめ》を売《う》つたりする者《もの》、越後獅子《ゑちごじゝ》やら、猿廻《さるまはし》やら、附木《つけぎ》を売《う》る者《もの》だの、唄《うた》を謡《うた》ふものだの、元結《もつとゐ》よりだの、早附木《はやつけぎ》の箱《はこ》を内職《ないしよく》にするものなんぞが、目貫《めぬき》の市《まち》へ出《で》て行《ゆ》く往帰《ゆきかへ》りには、是非《ぜひ》母様《おつかさん》の橋《はし》を通《とほ》らなければならないので、百人と二百人づゝ朝晩《あさばん》賑《にぎや》な[#「賑《にぎや》な」はママ]人通《ひとどほ》りがある。
それからまた向《むか》ふから渡《わた》つて来《き》てこの橋《はし》を越《こ》して場末《ばすゑ》の穢《きたな》い町《まち》を通《とほ》り過《す》ぎると、野原《のは
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