もしろい、結構《けつかう》なことはない。しかし私《わたし》にかういふいゝことを教《をし》へて下《くだ》すつた母様《おつかさん》は、とさう思《おも》ふ時《とき》は鬱《ふさ》ぎました。これはちつともおもしろくなくつて悲《かな》しかつた、勿体《もつたい》ないとさう思《おも》つた。
だつて母様《おつかさん》がおろそかに聞《き》いてはなりません。私《わたし》がそれほどの思《おもひ》をしてやう/\お前《まへ》に教《をし》へらるゝやうになつたんだから、うかつに聞《き》いて居《ゐ》ては罰《ばち》があたります。人間《にんげん》も鳥獣《てうぢゆう》も草木《さうもく》も、混虫類《こんちゆうるゐ》も皆《みんな》形《かたち》こそ変《かは》つて居《ゐ》てもおんなじほどのものだといふことを。
トかうおつしやるんだから。私《わたし》はいつも手《て》をついて聞《き》きました。
で、はじめの内《うち》は何《ど》うしても人《ひと》が鳥《とり》や、獣《けだもの》とは思《おも》はれないで、優《やさ》しくされれば嬉《うれ》しかつた、叱《しか》られると恐《こは》かつた、泣《な》いてると可哀想《かあいさう》だつた、そしていろんなこと
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