ぼ》えられることではないんださうで、お亡《なく》んなすつた、父様《おとつさん》トこの母様《おつかさん》とが聞《き》いても身震《みぶるひ》がするやうな、そう[#「そう」に「ママ」の注記]いふ酷《ひど》いめに、苦《くる》しい、痛《いた》い、苦《くる》しい、辛《つら》い、惨刻《ざんこく》なめに逢《あ》つて、さうしてやう/\お分《わか》りになつたのを、すつかり私《わたし》に教《おし》へて下《くだ》すつたので。私《わたし》はたゞ母《かあ》ちやん/\てツて母様《おつかさん》の肩《かた》をつかまいたり、膝《ひざ》にのつかつたり、針箱《はりばこ》の引出《ひきだし》を交《ま》ぜかへしたり、物《もの》さしをまはして見《み》たり、縫裁《おしごと》の衣服《きもの》を天窓《あたま》から被《かぶ》つて見《み》たり、叱《しか》られて逃《に》げ出《だ》したりして居《ゐ》て、それでちやんと教《をし》へて頂《いたゞ》いて、其《それ》をば覚《おぼ》えて分《わか》つてから、何《なん》でも鳥《とり》だの、獣《けだもの》だの、草《くさ》だの、木《き》だの、虫《むし》だの、簟《きのこ》だのに人《ひと》が見《み》えるのだからこんなお
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