《ほゝじろ》が居《ゐ》たのを、棹《さを》でもつてねらつたから、あら/\ツてさういつたら、叱《し》ツ、黙《だま》つて、黙《だま》つてツて恐《こは》い顔《かほ》をして私《わたし》を睨《ね》めたから、あとじさりをして、そツと見《み》て居《ゐ》ると、呼吸《いき》もしないで、じつとして、石《いし》のやうに黙《だま》つてしまつて、かう据身《すゑみ》になつて、中空《なかぞら》を貫《つらぬ》くやうに、じりツと棹《さを》をのばして、覗《ねら》つてるのに、頬白《ほゝじろ》は何《なん》にも知《し》らないで、チ、チ、チツチツてツて、おもしろさうに、何《なに》かいつてしやべつて居《ゐ》ました。
其《それ》をとう/\突《つゝつ》いてさして取《と》ると、棹《さを》のさきで、くる/\と舞《ま》つて、まだ烈《はげ》しく声《こゑ》を出《だ》して啼《な》いてるのに、智恵《ちゑ》のあるおぢさんの鳥《とり》さしは、黙《だま》つて、鰌掴《どぜうつかみ》にして、腰《こし》の袋《ふくろ》ン中《なか》へ捻《ねぢ》り込《こ》むで、それでもまだ黙《だま》つて、ものもいはないので、のつそりいつちまつたことがあつたんで。
第四
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