縁結び
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)襖《ふすま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八|畳《じょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、286−4]
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一
襖《ふすま》を開けて、旅館の女中が、
「旦那《だんな》、」
と上調子《うわっちょうし》の尻上《しりあが》りに云《い》って、坐《すわ》りもやらず莞爾《にっこり》と笑いかける。
「用かい。」
とこの八|畳《じょう》で応じたのは三十ばかりの品のいい男で、紺《こん》の勝った糸織《いとおり》の大名縞《だいみょうじま》の袷《あわせ》に、浴衣《ゆかた》を襲《かさ》ねたは、今しがた湯から上ったので、それなりではちと薄《うす》ら寒し、着換《きか》えるも面倒《めんどう》なりで、乱箱《みだればこ》に畳《たた》んであった着物を無造作に引摺出《ひきずりだ》して、上着だけ引剥《ひっぱ》いで着込《きこ》んだ
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