、上から俯目《ふしめ》に覗込《のぞきこ》むようにして、莞爾《にっこり》していると、小児《こども》は行儀よく机《つくえ》に向って、草紙に手習のところなんだがね。
今でも、その絵が目に着いている。衣服《きもの》の縞柄《しまがら》も真《まこと》にしなやかに、よくその膚合《はだあい》に叶《かな》ったという工合で。小児《こども》の背中に、その膝についた手の仕切がなかったら、膚へさぞ移香《うつりが》もするだろうと思うように、ふっくりとなだらかに褄《つま》を捌《さば》いて、こう引廻《ひきまわ》した裾が、小児《こども》を庇《かば》ったように、しんせつに情《じょう》が籠《こも》っていたんだよ。
大袈裟《おおげさ》に聞えようけれども。
私は、その絵が大好きで、開けちゃ、見い見いしたもんだから、百人一首を持出して、さっと開《あけ》ると、またいつでもそこが出る。
この※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、295−4]《ねえ》さんは誰だい?と聞くと阿母《おふくろ》が、それはお向うの※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、295−4]《ねえ》さんだ
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