《おじぎ》をして、
「でござりますから瓢箪淵《ひょうたんふち》とでもいたした方が可《よ》かろうかとも申します。小一の顔色《かおつき》が青瓢箪を俯向《うつむ》けにして、底を一つ叩いたような塩梅《あんばい》と、わしども家内なども申しますので、はい、背が低くって小児《こども》同然、それで、時々相修業に肩につかまらせた事もござりますが、手足は大人なみに出来ております。大《おおき》な日和下駄《ひよりげた》の傾《かし》いだのを引摺《ひきず》って、――まだ内弟子の小僧ゆえ、身分ではござりませんから羽織も着ませず……唯今頃はな、つんつるてんの、裾《すそ》のまき上った手織縞か何かで陰気な顔を、がっくりがっくりと、振り振り、(ぴい、ぷう。)と笛を吹いて、杖を突張《つっぱ》って流して歩行《ある》きますと、御存じのお客様は、あの小按摩の通る時は、どうやら毛の薄い頭の上を、不具《かたわ》の烏が一羽、お寺の山から出て附いて行《ゆ》くと申されましたもので。――心掛《ここころがけ》の可《よ》い、勉強家で、まあ、この湯治場は、お庇様《かげさま》とお出入《でいり》さきで稼ぎがつきます。流さずともでござりますが、何も修業と
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