を注《そそ》ぎながら、頁《ペエジ》を開《ひら》く。
 雪なす鸚鵡は、見る/\全身、美しい血に染《そま》つたが、目を眠るばかり恍惚《うっとり》と成つて、朗《ほがら》かに歌つたのである。
 ――港で待つよ――
 時に立窘《たちすく》みつゝ、白鞘《しらさや》に思はず手を掛けて、以ての外《ほか》かな、怪異《けい》なるものどもの挙動《ふるまい》を屹《き》と視《み》た夫人が、忘れたやうに、柄《つか》をしなやかに袖に捲《ま》いて、するりと帯に落して、片手におくれ毛を払ひもあへず……頷《うなず》いて……莞爾《にっこり》した。



底本:「日本幻想文学集成1 泉鏡花」国書刊行会
   1991(平成3)年3月25日初版第1刷発行
   1995(平成7)年10月9日初版第5刷発行
底本の親本:「泉鏡花全集」岩波書店
   1940(昭和15)年発行
初出:「中央公論」
   1912(大正元)年11月
※ルビは新仮名とする底本の扱いにそって、ルビの拗音、促音は小書きしました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:川山隆
2009年5月10日作成
青空文庫作成ファイル:
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