さき》に三人|属《つ》いて、浅緑《あさみどり》の衣《きぬ》に同じ裳《も》をした……面《おもて》は、雪の香《か》が沈む……銀《しろがね》の櫛《くし》照々《てらてら》と、両方の鬢《びん》に十二枚の黄金《こがね》の簪《かんざし》、玉の瓔珞《ようらく》はら/\と、お嬢さん。耳鉗《みみわ》、腕釧《うでわ》も細い姿に、抜出《ぬけで》るらしく鏘々《しょうしょう》として……あの、さら/\と歩行《ある》く。
 母親が曲※[#「碌のつくり」、第3水準1−84−27]《きょくろく》を立つて、花の中で迎へた処《ところ》で、哥鬱賢は立停《たちど》まつて、而《そ》して……桃の花の重《かさな》つて、影も染《そ》まる緋色の鸚鵡《おうむ》は、お嬢さんの肩から翼、飜然《ひらり》と母親の手に留《と》まる。其を持つて、卓子《テエブル》に帰つて来る間《ま》に、お嬢さんの姿は、※[#「女+必」、第4水準2−5−45]《こしもと》の三《みっ》ツの黒い中に隠れたんです。
 鸚鵡は誰にも馴染《なじみ》だわね。
 卓子《テエブル》の其処《そこ》へ、花片《はなびら》の翼を両方、燃立《もえた》つやうに。」
 と云ふ。声さへ、其の色。暖炉《だ
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