きんぼう》だったが、農夫以前の話とおなじような事がはじまった、家《うち》が、丁度《ちょうど》、谷間のようなところにあるので、その両方の山の上に、猟夫《かりゅうど》を頼んで見張《みはり》をしたが、何も見えないが、奇妙に夜に入《い》るとただ猟夫《かりゅうど》がつれている、犬ばかりには見えるものか、非常に吠えて廻ったとの事、この家に一人、子守娘が居て、その娘は、何だか変な動物《もの》が時々来るよといっておったそうである。
同《おんな》じ様に、越前国丹生郡天津村《えちぜんのくににゅうぐんあまつむら》の風巻《かざまき》という処に善照寺《ぜんしょうじ》という寺があって此処《ここ》へある時村のものが、貉《むじな》を生取《いけど》って来て殺したそうだが、丁度《ちょうど》その日から、寺の諸所《しょしょ》へ、火が燃え上るので、住職も非常に困って檀家《だんか》を狩集《かりあつ》めて見張《みはる》となると、見ている前で、障子がめらめらと、燃える、ひゃあ、と飛《とび》ついて消す間に、梁《うつばり》へ炎が絡む、ソレ、と云う内羽目板から火を吐出《ふきだ》す、凡《およ》そ七日ばかりの間、昼夜|詰切《つめき》りで寐《
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