伊勢之巻
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)床《ゆか》しき

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)伊勢国|古市《ふるいち》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》す
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 昔男と聞く時は、今も床《ゆか》しき道中姿。その物語に題は通えど、これは東《あずま》の銭なしが、一年《ひととせ》思いたつよしして、参宮を志し、霞《かすみ》とともに立出でて、いそじあまりを三河国《みかわのくに》、そのから衣、ささおりの、安弁当の鰯《いわし》の名に、紫はありながら、杜若《かきつばた》には似もつかぬ、三等の赤切符。さればお紺の婀娜《あだ》も見ず、弥次郎兵衛《やじろべえ》が洒落《しゃれ》もなき、初詣《ういもうで》の思い出草。宿屋の硯《すずり》を仮寝の床に、路《みち》の記の端に書き入れて、一寸《ちょいと》御見《ごけん》に入れたりしを、正綴《ほんとじ》にした今度の新版、さあさあかわりました双六《すごろく》と、
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