今度こそ
片岡鉄兵
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)半歳《はんとし》たった。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「おふくろ」に傍点]
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甲吉の野郎、斯う云うのだ。
「何しろ俺には年とったおふくろ[#「おふくろ」に傍点]もあるし、女房もあるし、餓鬼もあるし――」
だからストライキには反対だと云うんだ。それから、あいつはそっと小声でつぶやく、
「若え奴らのオダテに乗れるかい」
スキャップにはスキャップの理窟があるもんだ。馘になったら困る。今の世の中に仕事を捜すだけでも大変なんだ。
「俺ア厭だよ、おふくろ[#「おふくろ」に傍点]や女房や餓鬼を飢えさせるなア、ごめん蒙りてえのさ」
そこで俺は云ってやった。
「兄弟、お前の云うなア尤もだ。全くこの不景気じゃア、一ぺん失職したら飢死だ。が、それだから資本[#「資本」に「×」の傍記]家はそこを突け込んで来るんだ――だから、それだから俺らア弱[#「弱」に「×」の傍記]味を見せちゃならねえんだ」
おふくろ[#「おふくろ」に傍点]はお前えばかりにあるんじゃないよ――俺はそうも云
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