ってやった。あらゆるプロレタリアに家族があるんだ。もしストライキの犠牲者として職場から追っぽり出されたら、困るのは誰だって同じことだ。それを恐れ[#「恐れ」に「×」の傍記]てたんじゃ、プロレタリアは永久に闘争[#「闘争」に「×」の傍記]なしで居なくちゃならない。永久に闘争[#「闘争」に「×」の傍記]しないのなら――畜生、資本[#「資本」に「×」の傍記]家に搾ら[#「搾ら」に「×」の傍記]れるだけ搾らせろとでも云うのか!
 が、そういう風で甲吉の野郎はとうとうストライキに加わらなかった。そんな仲間が、俺らの小工場の中に十四五人もあったんだ。
 で、このストライキは結局、犠牲者を絶対に出さぬと云う条件で、一先ずおさまった。指導部[#「指導部」に「×」の傍記]が社会民主々義で、こっちの力がまだ足りなかったのだ。賃下げ反対の要求なんか全然無視されたんだから、糞いまいましいが、敗北だった。
 半歳《はんとし》たった。或日――
「甲吉の野郎? あいつア人間じゃねえ」
 裏切者! 卑怯者!
 甲吉はみんなから変な眼で睨まれ始めた。スキャップ[#「スキャップ」に「×」の傍記]仲間は職場がちがっていた。
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