お前えら、俺を憎んでるじゃねえか。憎まれながら、お前えらのおかげで千円貰ったって嬉しかねえよ」
「どうしてお前えは、先《せん》のストライキの時によ、それだけの意地を出さなかったんだい。裏切[#「裏切」に「×」の傍記]者になってまで首[#「首」に「×」の傍記]をつなぎたかあねえんだとな」
甲吉は黙ってしまった。
俺は帰ろうとすると、彼奴は俺を呼び止めた。
「ちょっと話したい事がある」そしておっかアの方に「お前えちょっと彼方《あっち》へ行っといで」と云った。
二人だけになった時、甲吉は云った。
「お前え、共産党[#「共産党」に「×」の傍記]か?」
「ううん、ちがう」
「嘘つけ」と彼は眼を尖らせた。
「何でそんな事云うんだ?」
「そんな気がする」
しばらくして、甲吉はつぶやいた。
「いや、もう遅い。片腕じゃ……くそ[#「くそ」に「×」の傍記]っ」
翌日の職場大会に、交渉決裂の報告を齎らした委員を迎えて、聴衆[#「聴衆」に「×」の傍記]は湧き立った。今度こそは! 俺ら全協[#「全協」に「×」の傍記]の仲間も躍り上った。俺らは一生懸命に働かなくちゃならぬ。ダラ幹の入る隙[#「隙」に「×
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