日曜日から日曜日まで
南部修太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)思つてゐた[#「思つてゐた」は底本では「思つつてゐた」]
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 日曜日――。
 明方四時頃例に依り輕い喘息發作に眼が覺める。アストオル吸入で發作を鎭めて再び眠りに就いたが、この一ヶ月近く毎朝さうして眠りを中斷されるのは叶はない。幸ひ重い發作に進まないので實際助かるが、明方のシインとした寢臺に自分の喘鳴と吸入操作のゴム球の音に一人耳を傾けてゐると、三つで喘息持になつてから既に四十一年、何と息苦しい一生を過して來た事かなどとつくづく思ふ。
 九時過ぎ起床。パンに紅茶、ボイルド・エツグにサラダとお極りの朝食を濟ますと、ざつと新聞に眼を通し、すぐ洋服に着換へて三田四國町の久保田万太郎邸へ行く。昨日の夕刊で奧さんの思掛ない死去を知つたからだ。玄關先の混雜の中で久保田さんに會つて弔意を述べ、二階へ上つて棺前に禮拜する。水上瀧太郎、小泉信三の兩先輩、その他水木京太、勝本清一郎、高橋邦太郎などに會ふ。多方面の弔問客の來往する間、水木、勝本達と夕方まで棺前に侍し
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