ま》したのだが、二人とも一|向《こう》棋《き》力が進《しん》歩しない所まで似《に》てゐるのだから、聊《いさゝ》か好敵《こうてき》手|過《す》ぎる嫌《きら》ひもある。尤《もつと》も、あれで若《も》しどつちかが斷然《だんぜん》強《つよ》くでもなつたとしたら、恐《おそ》らく進《すゝ》まぬ方は憤然《ふんぜん》町内を蹴《け》つて去《さ》つたかも知れない。桑《くは》原、桑《くは》原!

 =2=[#「=2=」は縦中横]痛まし專門棋士

 名人|决《けつ》定|戰《せん》の金、花田|兩《れう》八|段《だん》の對局《たいきよく》、相踵いで大崎、木見|兩《れう》八|段《だん》の對局《たいきよく》を觀戰《くわんせん》して、僕《ぼく》は專《せん》門|的《てき》な棋戰《きせん》の如何に苦《くる》しく辛きものであるかをつくづく思《おも》ひやつた。そして、その立場には寧《むし》ろ痛《いた》ましさを感《かん》じた。とにかくその初《はじ》めは切|實《じつ》な人間生|活《くわつ》の慰樂《いらく》として遊《あそ》びとして創《つく》り成された將棋《せうき》に違《ちが》ひないと思《おも》ふが、それを慰樂《いらく》や遊《あそ》び
前へ 次へ
全10ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
南部 修太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング