くわんねん》と見られぬ事もない。從《したが》つて、今度の實《じつ》力主|義《ぎ》の名人|制《せい》度は、たとへ幾《いく》分えげつない感《かん》じはあつても、たしかに棋界《きかい》の進《しん》歩といふべきであらう。何も勝負《せうふ》だ、戰《たゝか》ひだ。堂堂《どうどう》と遠慮《えんりよ》なく爭《あらそ》ひ勝《か》つべく、弱《よわ》き者|敗《やぶ》るる者がドシドシ蹴落《けおと》されて行く事に感傷的《かんせうてき》な憐憫《れんびん》など注《そゝ》ぐべきでもあるまい。幸運《こううん》悲運《ひうん》のけじめは勿論《もちろん》あるとしても、勝《か》つ者が勝《か》つには必《かなら》ず當|然《ぜん》の理《り》由がある。蹴落《けおと》されて憐憫《れんびん》を待《ま》つ如き心|掛《かけ》なら、初《はじ》めから如何なる勝負《せうふ》にも戰《たゝか》ひにも出る資格《しかく》はない譯《わけ》だ。とにかく舊式《きうしき》の名人|制《せい》打|破《は》は甚《はなは》だいい。ただ問題《もんだい》は棋界《きかい》に功勞《こうろう》があり、而も棋《き》力|衰《おとろ》へた老棋士《ろうきし》の老《ろう》後の生|活《くわつ》に對《たい》して同時に何等かの考慮《こうりよ》が拂《はら》はるべきである事を僕《ぼく》は切言したい。
底本:「ホーム・ライフ 昭和十年十二月號」大阪毎日新聞社
1935(昭和10)年12月1日発行
入力:小林 徹
校正:鈴木厚司
2008年11月11日作成
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